それでもボクはキミを想う


私は遥香先輩の歌詞に仕上げた曲をつけたデモを渡す時に、みんなに脱退する事を告げるつもりだった。

ライブまで後一ヶ月をきったある日、私達は遥香先輩から驚く発表があった。

定期的にライブ活動しているせいか、固定ファンも付きはじめて、今年に入ってから、色んなオーディションライブに出たり、応募したりしていると、ある一社から連絡もらえたとの事だった。

そして、悠人のいる蘭先輩のところにも連絡が入っており、今度のライブに担当者が観にくるということだった。

みんなが気合い入る中、やはり残念ながら私は、燃え尽きてしまっていた感じだった。

脱退宣言を言い辛い状況の中、早めに言わなければみんなにももっと迷惑がかかる…

ここ最近ヘタレ気味の私は勇気を振り絞り言葉を切り出した。

『あの…ライブ迫る中で言い辛いんですが、私、今度のライブを最後に、すいませんが…
≪脱退≫させて下さい…』

私の一言で騒がしかったスタジオの中が、一瞬シーンと静まりかえった。

『急にどうしたんだよ!藤崎!!
まだ、松宮のことを引きずってるのか?』

気まずい中、驚いた石田くんが最初に口火をきったが、それを聞き、みんなに少し気を使わせてしまった…

『ううん、悠人のことは、もういいの…
この間、遥香先輩に歌詞もらって、私が曲を書かせてもらうことになったでしょ?』

『ああ、藤崎、できねぇのか?』

『いいえ…出来たんです。
これ、出来上がった曲です。
聞いてもらえますか?』

そう告げると曲を入れてきたipodをスピーカーに繋ぎ、曲をかけた。