それでもボクはキミを想う


仕事から帰ると、毎日弾いていたピアノやギターにも触れる気にならず、毎年恒例のライブを控えてる大事な時期に、今までの様に音楽を楽しめずに焦っていた。

私は悠人と別れた事を、わざわざ言わなかった。
悠人が新しい彼女の井上さんを連れて歩いているので、私達が別れた事を周りは知っていた。

同じバンドメンバーのベーシストの石田くんが、

『なぁ、藤崎?
最近疲れきってるんじゃねぇの?
そんな状態続けられても時間が勿体ねぇし、ライブまでもうあまり時間がない。
お前の私情は俺達関係ねぇし、バンド事態にも迷惑なんだよ!
それに自分を磨くいいチャンスじゃねぇか?
松宮を…奴を見返してやれよ!
藤崎、お前なら俺の言ってることの意味はわかるはずだろ?』

案の定、私を見かねた石田くんは、思いっきり『渇』を入れてきた。

『ごめん…自分でもわかってるんだ…
迷惑かけてることも…
何か…どうあがいても…
今…脱け出せなくて…
自分でも嫌になるよ…』

途切れ途切れしか出てこない私の言葉…

『藤崎!!』
『莉乃さん!!』
『莉乃!!』

そうみんなに名前を叫ばれた時には…
今まで針積めてた私の意識の糸が“プツリ”と音を断て切れていた…