夜の9時ぐらいに綾の部屋にノックがあった。

「だれ?」

「私」

「私という人は知りません」

「いや、綾さん。そんなお茶目な事言わないでよ開けてくれないとこのまま騒ぐから」

ドアが開いた。

「黙って入って」

「おじゃましま~す」

「何しに来たの?」

「つれないなぁ綾さん」

「一言、言っておくわね。先日アルバイト手伝ってくれてありがとう」

「死んでも行くって感じだったしね」

「生活がかかってるから」

「助けてくれたお礼とね」

「話し変わるけれど何しに来たの?」

「えっと、久しぶりに会ったのに、ほぼ無視だったから」

「なら、あなたはこの町に始めて来た事になってるのに私が知ってたらおかしな事になるでしょ」

「でも、そっけなさ過ぎだし」

「普段どおりだったけど?」

「あれが綾さんの普通の学校生活?」

「そうだね」

「そっか」

「私からも聞いていい?」

「何?綾さん」

「なぜあの時いなくなったの?嘘なしでお願い。流石に気になる」

「ん~日本の捜査する人たちって無能じゃないからね。
外に出ずに窓にも顔出さずにすれば可能だけどずっとは難しいかなぁ
それで数日間バイトに行ったでしょ
この部屋から帰った日の朝方、
見慣れた車を見たから時間が来たかなぁって思ったわけ
黙っていなくなってごめんね」

栞はちょっとばつが悪そうに言った。

「もうひとつ仕事いやになって逃げたの?」

「仕事は好きだよ。
歌、歌うのも、作るのも、お芝居をするのも基本好きだよ
あの日は丁度セクハラに近いの受けたり、
色々あってお酒を飲んで
意識不明な感じになって気づいたら
綾さんに助けられてた感じかな」

「仕事がいやになって逃げたわけじゃないんだ」

「一応はね、でもその後の数日は空けになったけど
それはいろいろな人に迷惑かけたけれど
丁度その埋め合わせも先日終わった所だよ。
綾さんそういうの嫌いでしょ」

「別に私は関係ないでしょ
確かに仕事を途中で捨てる人は嫌いだけど」

綾は少し顔を横に向けた。

だから綾さん
そういうギャップがめちゃ可愛いけど言ったら

「そう」と答えるんだろうなぁ

「忙しいんでしょ?
芸能人さん?」
そっぽを向いて栞に問いかけた。

「意地悪だなぁ綾さんは
会えてうれしいくせに」
いたずらっ子のように綾に話しかけた。

「そんなこと無い
話はそれだけ
ならもういいよね」

栞は寒気を感じた。
やばい地雷を踏んだと感じた。

「ごめん綾さん。冗談だって」

「会えてよかったのはきっと
あやふやなままであなたが帰ったから気になっただけそれだけよ」

「今日泊まったら駄目?」

「駄目よ、この近くに部屋があるんでしょ」

「有るけど、もう夜遅いし」

「あんな時間にきたら遅くなる
あなた、計画犯ね
スキャンダルになると困るでしょ」

くすくす
栞は嬉しくて顔がほころんだ。

「何、笑ってるの?可笑しい事言った。」

「だってぇ、普通スキャンダルって
男の部屋から出てきたって事でしょ
綾さん何処から見ても女性じゃん
まぁ私が変装したら身長の低い男性になり得るけれど」

綾のスタイルと自分のスタイルを見比べて
がっかりしながら話した。

綾は身長が高くスラットしていて
しかも出るとこは出ていて引っ込む所はしっかりとしていた。
対する栞は反対に身長が低く
芸能人だから体重は軽いが全体的に幼児体系に近かった。

「スキャンダルって男女だけじゃないでしょ
夜遊びもそうじゃない
まだ22時だから今なら間に合う」

「綾さんは、か弱い女の子を
夜道を帰らす気?」

「いつも私はこのぐらいに帰るから大丈夫よ」

「う~わかった帰るね
学校では普通に接して欲しいな」

「やっかみがあると面倒だからいや
それに友達、かなり出来たような気がするけれど」

「あれはたぶん違うよ」

「ちがう?」
「だってあれは私が芸能人だからだよ」

「ん?」

本当にわからないって顔してる横の人。頭の回転速いのになぜこんな簡単なことがわからないの?

「でも今度の土曜日遊びに行くのでしょ?」

「急な仕事が入らなければね」

「普通遊びに行くのは友達だからでしょ」

「まぁ友好かねてもあるけれど、せっかく同じクラスになったら誘われたらいやな人じゃない限り行かない?」

「行かないし、時間の無駄」

「綾さん?部活の部員とは遊びに行かないの?」

「行かないよ。時間もないし、友達じゃないから」

「サッカー面白い?」

「好きだよ?でも今は大変かなぁ」

「なんで?」

「思ったところにチームが来てくれないし、先生がいなくなったらだらだらやっているから見てるときが一番疲れる」

「それって部員に言ってる?」

「なぜ?」

「チームスポーツでしょ。言わないとわからなくない」

「最低限は言わなくてもわかるでしょ。高校生なんだから」

いやまぁそうなんだけど
この人めちゃくちゃ対人スキルないよ
絶対個人種目のスポーツのほうがあってる
でも普段なんでも知っているように見えるこの人がこんなに聞いてくるのはなんだか面白い

「気に入らないものは話し合ったりしないとチームがまとまらないと思わない?」

「でも私、よくバイトで部活にあまり出ていないからよくわからない」

「何でサッカーなの?」

「サッカーが好きになった理由?」

「そう」

「別に関係ないでしょ」

綾は少しだけそっぽを向いて話した。

栞はずっと綾を見つめていて、とうとう根負けした

「ずっと昔にね」

「え?」

「聞きたいんでしょ」

栞は先ほどの質問は話してくれないと思いながら
綾の横顔綺麗と感じていて見つめていただけだったので
いきなりの不意打ちだった。

「え、うん聞きたい」

「昔って言っても今から10年前ぐらいかなぁ
サッカーはその前からやってはいたんだけれど、
その時のCMがすごく面白いCMで練習していたら
もっともっと面白くなって今に至るって事かなぁ」

「確かアディダスかなんかのCMでブラジルとポルトガル戦の設定でね
そのCMである選手がね足とボールがくっ付いているみたいに
右に行ったボールがすぐ反動で左に行くテクニックを
やっていたんだ
それを見て私もね」

うゎ綾さんって
サッカーの話をするとき
すごく目が輝いている
すごく楽しそう

「ごめん余り良くわからないよねそれがきっかけで実際に本格的にやり始めたの」

「プロにはならないの?」

「む~どうだろ日本だと数人しかプロ契約していない方ね」

「え!そうなの?なでしこで試合に出ている人たちってプロじゃないの?」

「あぁ、違うね数人位しかしていない状況」

「そっか目指さないの」

「どうだろうね」

「いつ見てたの?グランドにはいなかったけれど」

「教室から」
独りでしていたねと言おうとしたが
辞めておいた
折角話してくれているのに
へそを曲げられたら厄介というもの

そんな話をしながら栞は帰っていった。

綾はなんであんな話をしたが少しだけ不思議だった。