「彩」

耳元に心地好い低い声が響く。
なんて甘くとろけそうな音。

……誰かにこんな風に呼ばれるなんて久しぶり。

ふわりと髪を撫でられた、気がした。


「ん……」

ゆっくり瞳を開ける。

……ヒコ?!



……私の目の前でヒコは寝そべって頬杖をついて柔らかい眼差しで見つめていたのだ。



「あ……っと」


慌てて身体を起こす。

な、何?


彩華は無意識にてぐしで髪を整えながら周りを見回す。


海……



徐々に記憶が甦る。



……私、寝ちゃったの?