えっと、えーっと……

予想外のことに思考が停止してしまう。
頭の上から、伸彦の声が響いた。

「俺が傍に居たら、泣けない?」

「泣かない方が、いい……もんっ」

声が詰まる。

「泣いちゃえばいいのに」

こんなに優しい声してたっけ?
ってくらい、伸彦の声は彩華の耳に優しく響く。

「淋しいんだろ?」

……ああ、もう。
  なんで人の感情をストライクに言っちゃうかな。


……かくして、私は。
  男友達の胸の中で泣くという。
  忘れてしまいたいほど恥ずかしい経験をしてしまったわけ。



10代最後の夏の終わりに。