窓から聞こえるかすかな蝉の鳴き声と、クーラーの音だけが部屋中に響く。
私はなにが起きたかなにも分からずただ呆然と先輩を見つめていた。
先輩が私の手首を掴んで、前屈みになってるから前髪が目にかかる。
その隙間から覗かせる吸い込まれそうな瞳で
「……いい?」
と聞かれる。
「ちょちょっと待ってくださいっ」
「十分、待ったつもりです先輩は。」
「そ、そうなんっですけどっ……」
「大丈夫だよ」という先輩が私の耳に近寄る。
「優しくするから。」
わざとらしく、耳に囁いた先輩は身体が収縮する私を見てまたくすりと笑う。
