しばらく受け答えして通話を終えると、日菜は疲れたように言った。
「ごめんね…もうそろそろ帰らなきゃ」
「兄貴からか?」
「う、うん…。
実はお兄ちゃん、アルバイト始めたことを良く思っていなくて…」
だろうな。
あんなお嬢さま学校に通っているならバイトなんてする必要なんてない。
むしろ、する方が悪いことみたいに思われているんだろう。
…俺と日菜は、住む世界が全然ちがうんだな。
けど。
だからって、そう簡単には引き下がれるほど日菜に対する気持ちは軽くない。
そう、今改めて確信した。
日菜。
俺は必ず、おまえにこの気持ちを伝える。
おまえを必ず、俺のものにするからな。
「じゃあ帰るか。送ってく」
「う、うん…ありがとう。
あ、あのね、晴友くんっ」
「ん?」
恥ずかしそうに、でも思い切ったように日菜は言った。
「また一緒にスイーツ食べてくれる?」
ドキ、と胸が高鳴った。
俺はじっと日菜を見つめて、そして微笑んだ。
「ああいいよ。また来よう」
その瞬間に輝いた笑顔を、俺は絶対に忘れないと思った。
「…日菜」
俺は日菜の手を握った。
今度は最初から強く。決して離れないように。
日菜の手も、俺の手を強く握ってくれた。
もしかしたら。
俺たちの距離は、もうだいぶ縮まっているのかもしれない。
あと少し、ほんの少し。
このままなにも無ければ、俺たちはきっと結ばれる。
なにも無ければ…。



