ほんとうは。



…そうだよ。



って言いたい。




晴友くんには、好きな子がいるって聞いちゃったよ…。


すごくショックだよ。

悲しいよ。

つらいよ。


ってうったえたい。



そして…。




くだけそうになる胸と、ツンとなる鼻の痛みをこらえて、わたしは真っ直ぐに晴友くんを見つめた。

ちょっと怖くて、でも、ひきこまれるようにかっこいい顔に、精一杯声にならない言葉を投げかける。




そして伝えたい。




それでも、

わたしは、あなたのことが大好きだよ。




って…。




諦められたら、どんなに気が楽になるだろう。

でも、そんなこと簡単にできないほどに、あなたに夢中なんだよ…。




そう伝えたいよ。




晴友くん…。




不意に、晴友くんがわたしから目をそらした。


その奇麗な顔には、どうしてなのか、苦々しい表情が浮かんでいる。

もどかしくて、イラついているように…。



晴友くんの腕が、ゆっくりと下りた。




「もういい。仕事戻れよ」


「はい…」




その腕の横をさっと走って、わたしはホールへ戻った。