TAKAが死んだ?

TVの速報画面が私の脳裏に焼き付いて消えてくれない。
速報を告げる音が聴覚からこびりついて消えてくれない。


お守りのようにLIVEでの撮影会でTAKAと写真を撮った、
記念の一枚を抱きしめながら私なりにTAKAを思い続ける。





死んだって言われても、実感なんてわかないよ。 


どこをどうやって電車に乗り続けて、
神前駅へと辿り着いたかなんてわかんない。


ただ家を出て彷徨い続けた私は目的の神前駅へと辿りついたみたいだった。



「里桜奈。こっち」


急に誰かに腕を掴まれて引き寄せられる。

委縮した体をどうにか落ち着かせようと努力しながら目の前の人を意識して見つめる。


「紗雪……」

「あぁ、もう。やっぱり言わんこっちゃない。
 無事に神前駅まで来てくれて良かった」


そう言うと紗雪は私をギュッと抱きしめてくれた。
少し意識がしっかりとしてきた私は周囲を見つめる。


神前駅周辺は、真っ黒な服に身を包んだAnsyalファンたちが何人も集まってた。
それぞれに友達同士で肩を組んで慰め合ったり抱き合いながら涙を流していたり。


だけど……私はまだ、涙なんて流れそうになかった。


「貴姫さんたちは?」

「貴姫さんたちはファンの情報網でセレモニーホールとかを調べてる。
 献花を手配したいでしょ。

 貴姫さんも実際はTAKAファンだからいっぱいいっぱいみたいだけど、
 他のメンバーファンの幹部が支えながらやってるみたい。

 だから今回、AnsyalのTAKAファン以外のチームメンバーは、
 TAKAファンの全面サポートとバックアップのお達しがきたの。

 私だって正直、TAKAが亡くなったなんて実感ないし信じたくない。
 だけど多分、それは私が大好きな十夜も同じだと思うの。

 十夜もTAKAとの別れの哀しみを必死に頑張ってると思う。
 だからそんな残されてるメンバーが悲しむようなことだけは、
 絶対したくないってTAKA以外のファンたちは一致団結したの。

 今日から暫くは私、ちゃんと里桜奈のことも祐未のことも守りきる。
 二人だけじゃなくて、チームの他の仲間たちもチーム外の仲間たちも」


紗雪はそう言って、私にゆっくりと今の紗雪たちの気持ちを伝えてくれる。


神前駅に無事に来れて良かった。



一人では乗り越えられないかもしれない壁も、
この場所で同じ想いを抱えた仲間たちと一緒なら前にすすめるかもしれない。

そんな風に思わせてくれた。