ドアの前、コンコンっと手の甲でノックする。
「里桜奈です」
「あっ、入っていいよ」
奥からの許可を貰ってドアをガラガラっと開けると病室には先客。
病室に居たのは背の高い綺麗な年上のお姉さん。
チクリと痛む心を抑えながら、その場から動けなくなる。
「里桜奈、入っといで」
ベッドの上から声をかけられて楓我さんの声に引き寄せられるように、
二・三歩足を踏み込んだものの、ベッドサイドまでは足が動いてくれなかった。
近いのに……とても遠く感じる。
病室に私が知らない女の人がいるだけで。
「里桜奈ちゃん?
あらっ、楓我どうしよう?
この子勘違いしてない?」
目の前の綺麗なお姉さんが楓我さんに向かって心配そうに紡ぐ。
「なぁ、里桜奈。
こいつに逢うの、二回目だけど?」
えっ?
私……前に逢ってるの?
「里桜奈ちゃん、覚えてない?
前にAnsyalの五月のLIVEの時にいきなり朝から押しかけて来たでしょ。
楓我に連れられて。
優歩って言えば、思い出してくれるかしら?」
ゆある……あっ、美容室の優歩さんだ。
でもその時は優歩さんの髪は短くて、
でも目の前にいる人は凄く綺麗な長い髪してる。
「あぁ、良かった。
その表情が零れたってことは、
多分、里桜奈ちゃん思い出してくれてるよね」
優歩さんに言われて、コクリと頷いた。
だけど思い出したとたんに、
現実感が膨らんでくる。
あの日から会わなかったから優歩さんの存在を意識する必要なんてなかったのに、
今は……凄く意識してる。
あの時も……チクリって胸に痛みが走って苦しかった……。
「って、楓我。また里桜奈ちゃん落ち込んでる。
アンタ、まだ何も言ってないの?」
優歩さんは、ズケズケと楓我さんにもの申す。
「あぁ、里桜奈ちゃん。
誤解されてそうだから先に行っとく。
私は瑠璃川優歩(るりかわ ゆある)。
楓我の幼馴染。
後は、もう一つ付け加えるならAnsyalのスタイリストもしてるわね」
今、目の前のお姉さん……サラっととんでもないこと言った。
Ansyalのスタイリスト?
楓我さんはそれを知ってたから、
あの日……早朝から私を美容室に連れてったの?
でもその日は本番当日。
そしたら優歩さん、とっても忙しかったんじゃ……。



