「私は……弱いから……」


私は弱いから……。


気が付いたら机の上には涙の後が零れ落ちてて、
制服の袖で、止まらない涙をぐしゃぐしゃと拭う。



「ほらっ。里桜奈制服汚れる」


紗雪が差し出してくれたハンカチを受け取って涙をふき取る。



「ねぇ、私さ、思うんだよね。

 アンタ、弱くないよ。
 アンタは自分の弱さを知ってる。

 弱さを知ったうえで一歩踏み出そうとしてるヤツって、
 弱いって思いこんでるだけで本当は強いんだよ。

 さっき、里桜奈が話した過去なんて、
 抱えてるだけでも大変ジャン。

 だけど里桜奈はそれ私に分けてくれた。
 信用しないと話せないよ。

 誰かを信用できるって言うのも強さなんだよ」


誰かを……信用できるのも強さ……。


「里桜奈に言われて私たちもカラオケの後、考えたよ。
 井村のこと。

 私から手を差し伸べるなんてガラにもないんだけどさ、
 里桜奈に免じて動くよ。

 最初のきっかけってヤツ?
 
 裕未のバカに寄り添ってみるよ」



紗雪の言葉に……涙に滲んだ世界のまま微笑みかけた。





あれっ……でも今、井村さんのこと裕未って言ってた。


どうして?


「あっ、あのね……紗雪。
 どうして……裕未さんって井村さんのこと呼んだの?」


問いかけた私に紗雪は、
もう一度笑いかけた。 



「だって、裕未は私の幼馴染だもん。
 小さい時、家も隣同士。

 でも……私は親の都合で引っ越し。

 フローシアに裕未が通ってるのを
 知ったのは去年。

 おっかしいよねー。
 幼等部から一緒に同じ校舎に居たのにね。

 裕未は……特進コースで私は進学コース。
 特進と進学の壁は厚いよ。

 特進コースは進学コースよりも大きな顔するじゃない?

 祐未と再会した時、私は裕未に話しかけたのに裕未は私を無視したのよ。

 私は、あの子を忘れてことなんてなかったのにさ。

 今年になって……特進から進学に移ってきた。

 だけど同じクラスになったら、元のように話かけてくれるって信じてた。
 だけど現実は違った。

 今も心を閉ざして誰も寄せ付けない裕未をみたら、
 またムカツイタの。

 私、特進のヤツラって嫌いだからさ。
 その中に裕未がいるって知った時、ムカツイタ反面スッとしたの。

 ツンと澄ました顔してるヤツラの鼻を裕未が折ってくれるかもってさ。

 だけど……裕未は言い方悪いけど特進から転落してきた。

 特進から進学に移るって言うのは、祐未の成績が下がったってことなの。
 特進はフローシアの要だから成績評価も厳しいのよ。

 なんか……ぐちゃぐちゃで正直、整頓つかなくてさ」


井村さんを思って心を吐き出してくれた紗雪は、
やっぱりどこか寂しそうで。