紙一重の強さってなんだろう。


あの日から……裕先生に問われた質問ばかり考えてる。


あの夜、紗雪はとっても優しかった。

こんなにも優しくしてくれる紗雪が好き好んで、
仲間外れになんてするはずない……。



紗雪は……あの時何て言ってた?


確か……







自分で心を開こうとしない人に、
こっちから近づいても疲れるだけだから。

だったら、それは友達じゃないよね。

一方通行なんだからさ。
一方通行なんて保護者だけで十分じゃない?








友達じゃない。





その言葉にだけ、私……過剰反応してた。


受け入れられない見てくれない寂しさを、
相手ばかりに押し付けて心を閉ざして守ってばかりになってた。


話す努力をしなかった。


交わる努力を忘れて助けてくれる、
おんぶしてくれる人だけを当たり前のように待ってた。



弱さに甘えて我慢することだけが、
心を閉ざすことだけが強さだと言い聞かせてた。



だから……大嫌いだった。



私を苛める人も、私自身も、家族も……学校も先生も。



教室の自分の机、席について井村さんの席だけを見つめる。

今日も誰かと言葉を交わすわけでもなくて、
ひっそりと読書に読みふける。


井村さん自身から世界を遮断している自己防衛のフィールドのように私には映って。


彼女の背中を見つめながら心の中がざわつく。


寂しいんだよね……寂しくないわけないよね。

私が……あの時、寂しかった。



寂しくて誰かと交わっていたかったのに、
交わっていたいと望む分だけ、どう思われてるのかが怖かった。



誰かの視線が怖くて怖くて……殻の中に閉じ込めた。



殻の中は優しいから。
殻の中は……優しくて寂しい場所。


その寂しさを私は……知ってる。


あの頃、二人だけの時間を大切にして、
僅かでも私を友達として受け止めてくれた奈知。


あの頃の私は……奈知の心すら読み取ることが出来なかった。


偽りの友達だと罵って……気に入らない現実の責任を奈知に押し付けた。


でも……今なら……。


「里桜奈、何難しい考え事してるの?」


額にコツンとデコピンして私の正面で微笑む紗雪。