GWが終って再び寮生活に戻った私。


毎日の生活にも慣れて一学期の中間テストを一週間後に控えた日、
私は……少し前までの私と被る記憶の出来事に遭遇する。


教室に入ってくるのは、いつも一番最後。


クラスの自習時間も皆、
一緒にプリントをやろうと集まってくるのにその子は一人きり。


休み時間になったら真っ先に出て行く。


ホームルームで何かを決めるときも、いつも一番最後。
クラス委員に割り込まされるように名前を連ねられる。


そんな出来事に気がついたときから私は、
その子を自分の過去のフィルターを通して見つめてしまう。


ただ……何も言えず、じっとその子を見つめるだけ。



「里桜奈どうかした?
 ずっと井原のこと見てない?」


紗雪が友達を連れて私に近づいて話しかけてくれる。

今は数学の自習時間。

高校に入って紗雪と出会ってから、
私は一人ぼっちの孤独を思い知ることが少なくなった。


学校ではいつも紗雪が隣で笑ってくれて、
紗雪が親しくしてる友達がいつも周囲を囲んでくれる。


賑やかな空間が当たり前すぎて、
数ヶ月前までの寂しさはあまり考えないで過ごせてた。


「あっ、里桜奈課題プリント終ってる」


紗雪が親しくしてる同じくAnsyal仲間の郁美【いくみ】ちゃんが、
机の上の私のプリントを奪ってうつしはじめる。



紗雪は自分の椅子をゆっくりと私の隣に引っ張ってきて、
隣に腰をおろした。



「あっ郁美、そのプリントごと佳代【かよ】たちのところ持ってっていいから。
 ちょっと、里桜奈と込み入った話してるわ」



私が話せないで居るのが郁美ちゃんがいることだと思ったらしい紗雪は、
すぐに友達を別の友達のほうへと誘導してゆっくりと向き直ってくれた。



紗雪は、こういう時の心配りもうまくて出会ってから一ヶ月ちょい、
何度も紗雪の細やかな気遣いに救われた。



「んで里桜奈。

 どうして井原ばっか見てるの?」



もう一度、私を覗き込むように質問した。



「……似てるの……」

「似てる?」


紗雪の問いかけにゆっくりと頷いた。


「中学までの私と被るの……。
 あの子……井原さんって言うんだ」


名前すら……初めて知った。