クリスタルホール。

今日のAnsyalのLIVEハウス会場前には、
開演までまだまだ時間があるのにすでに何人ものファンが姿を見せて、
グループを作ってたむろってた。


その名の通りガラス張りのクリスタルで覆われた近代的な建物。
そんな建物の前、いくつモノグループの輪が出来てる。


会場前の人だかり。
真っ白い服と、真っ黒い服に身を包んだ人、人、人。

あまりの人の多さに体がビクリと震える。



思わず両腕で体を抱きしめる。


「里桜奈ちゃん、大丈夫?」


大丈夫……大丈夫だよ。
今は隣に楓我さんも居てくれる。

それに、これから紗雪とも合流する。
この場所は怖くない。

怖くないから……どうかこれ以上震えないで私の体。


この場所はAnsyalが大好きな人たちばっかりが集まってる、
楽しい場所のばすだから。

男女が入り乱れてる会場内。

少しでも怖さを全面に感じると全ての人が私を拒絶して陰口を言ってるような気がして、
心の殻が閉じていこうとする……。




……ダメ……。



必死に自分の心と向き合う。




「ほらっ、里桜奈ちゃん。ちょっと深呼吸。
 ここに俺も居るし怖くないから、少し落ち着くまで座れるところ行こうか」


楓我さんに言われるままに体を両手で抱きしめて、
俯いたままトボトボ歩いていく。


せっかく……鏡の向こうの自分は別人に変われたと思ったのに、
このままじゃ……私、何も変わんないよ。

楓我さんに連れられるままに歩くものの、この人数。
何処も座れるところなんてない。


すると……何処からか声が聞こえる。


「席探してるの?」

「相席でもいいなら半分使っていいよ」


二人組の女の人たちは気合十分なゴスロリの服に身を包んで手招きする。

楓我さんが私の顔を見る。
私も小さく頷く。


「すいません。相席させて貰って」


楓我さんが声をかけて同じテーブルの椅子に私を座らせる。
メニューのオーダーを店員に素早く告げる。


「Ansyalに来たの?

 私、百花ね。託実ファン。
 こっちは……唯香でTakaファン。

 そっちは?」


百花さんと名乗った人は少し控えめで唯香さんって紹介された人は、
これでもかってくらいスカートが膨らんでた。


「俺は楓我。こっちは里桜奈」

「そっかー。楓我さんに里桜奈ちゃん。
 なんか、ちょっと里桜奈ちゃん具合を悪そうだよ。

 大丈夫?」

心配そうに覗き込んでくる唯香さん。


「あっ。大丈夫です……。
 LIVE初めてで、人の多さにびっくりして」

「そっかー。
 はじめてだったらびっくりするよねー。

 昔はもっとファン少なかったんだけどなー。
 最初の頃なんて、少ないときはガラガラだったけど、
 今はこんなに集められるよね。

 メンバーの努力も凄いよねー」


「で、楓我さんとあなたは誰が好きなの?」


入れ替わり立代り質問してくる二人に最初はタジタジで、
楓我さんの顔チラっと見ることしか出来なかったのに、
いつの間にか……会話の中にすーっと溶け込めてた。