友達って何?


紗雪と出会った直後、
初めて出来た友達に凄く心が躍った。


楽しかった。


朝の待ち合わせ。

一緒に寮を出て大好きなAnsyalの話をしながら、
電車の中で二人で一つのプレーヤーに挿したイヤホンを、
右と左に半分子して音楽を聴いて通学。

学校の最寄り駅、駅前のコンビニに寄って買い物して学校へ。

学校でも休み時間の度に集まって過ごして、
お昼ご飯も一緒にテラスで食べる。


今、あたり前になった日常。
凄く楽しい。




嬉しいはずなのに、なんか今一つ馴染みきれない生活。



楽しい時間を歩いてるはずなのに、
Ansyalに出逢って生まれ変われたはずなのに、
目を閉じると今も思い出すんだ。


幼稚園・小学校・中学校とずっと孤独【ひとり】で誰にも見えなかった時間。
あの時間に戻るのが怖くて今の時間に必死にすがろうとしてる。


今も……紗雪の顔色見て、クラスメイトの顔色見て、先生の顔色見て。
出会う人、交流を持つ人、全ての顔色を見てずっとビクビクしてる。


この時間を終らせたくない。
もう独りに戻るのは嫌だよ。



誰からも、見えなくなるのは嫌。


それが根っこに今も根付いてる。
生まれ変わったと思ってたのに……。




「里桜奈、何ボーっとしてるのよ」

「あっ、ごめんなさい」



紗雪の言葉に反射的に謝ってしまう私自身。




しかも意識して伝えてるんじゃない。
習慣化してしまってる何気ない言葉。


「えっ、ごめんなさいって何が?」


真っ直ぐに目を見つめて切り込んでくる紗雪。
そんな紗雪の目が怖くなって思わず目を逸らす。



「ボーっとしてしまってごめんなさい。
 紗雪を不愉快にして……ごめんなさい……」



だんだん、小さくなっていく言葉。



「もう、里桜奈ったら何言ってんのよ。
 それくらいのことで謝んないでよ。

 私たち友達でしょ」



紗雪は逸らした私の視線を追いかけるように、
もう一度捕らえるとにっこり笑って伝えた。