「そっか、CD欲しいって思えたんだ。

 そんなに届いたんだAnsyalの音。

 なら、後で買いに行こうか。
 直弥に許可貰って」




その言葉に思わず体が硬直する。



「どうかした?」

「……嬉しいけど……怖いから」


思わず本音が毀れる。


この部屋はとても優しくて暖かい。

だけど……その場所が暖かければ暖かいほど、
外の世界は冷たくて怖くなる。


もう一度、あの暗闇の世界に、独りの世界に戻るのが怖くて、
体が拒絶……する。


痙攣のように体がガクガクと震えだしたまま、
自分では何一つ制御できなくて、その震えをとめることも出来ない。


脳裏には……(外に出ても君を受け入れてくれる存在は誰もいないよ)っと 
そればかりがリフレインし続ける。



「いやっ。
 もうやめてっ!!」





息が出来ない……叫びと共に体が崩れ落ちる。
その間際、誰かの声が聞こえた。








目覚めたときにはお昼前。
再び、布団の中で目覚める。



「目が覚めた?気分はどう?」


優しい声が降り注ぐ。
その声は裕先生。


「落ち着きました……」

「そう。何か強いストレスでも引き起こしたのかな?」

「外の世界の話をしたから……怖がっちゃいけないのに……。

 あの場所が、私の居場所だから独りに戻るの怖がっちゃいけないのに。
 ここに来て、 世界に色がついたからあの場所に戻るのが怖くなった……」





そう……ずっと独りだった。


独りの時間に耐えるために全てを切り離して自分の世界に閉じこもって、
それ以上自分が傷つかないように守ってきた。


なのに……此処に来て硬く凍てつかせた氷がゆっくりと溶け始めてしまったから、
ずっと逃げ続けてた恐怖がゆっくりと飲み込んでいく。



「裕さん。すいません俺が悪いんですよ。
 発作起こさせるなんて」


後ろから、楓我さんが声を出す。


「楓我さんは悪くないです。
 私が弱いから……。

 AnsyalのCDが欲しくなったんです。
 自分で何かが欲しいって思うの初めてで……楓我さんに言ったの。、

 Ansyal聴いてたらちょっとずつ、生まれ変われる気がするんです。
 私の大嫌いな私から。

 弱虫の私から……だからCD欲しくて……」


上手く話すことが出来ないけど、精一杯の私の気持ちを裕先生に伝える。
悪いのは私で、楓我さんじゃないって伝えたくて。

 
「里桜奈が CD欲しいって言うから直弥が許可してくれたら一緒に買いに行こうかなーって思ったんだよ。
 俺も欲しいCDあったしな。」


さらに出してくれる助け舟。