前に一緒に過ごした病室の近くの一室へと入ると、
楓我さんを待っていた須藤先生に、いつもの様に睨まれた。
「楓我っ」
「悪い。
悪かったって直弥」
ベッドに上がり込んだ途端に、
掴み取られるように腕を抑えられた楓我さんは、
須藤先生によって点滴に繋がれてしまう。
「ごめん。里桜奈ちゃん。
あの日、里桜奈ちゃんのところに行こうとして病室は抜け出したんだけどな、
見つかってまんまと連行。
そのまま携帯もこいつに没収されて、連絡できなかった。
まだ直弥、携帯返してくれないんだよ」
そう言いながら、両手をあわせて私に拝むようなポーズを見せる。
「……会えたから……もういいです。
心配だったけど……」
「ホント、ごめん」
そう言って私に謝罪し続ける楓我さん。
するとずっと黙っていた須藤先生の指先が、
私の瞼をグイっと押し下げた。
「貧血だな」
「直弥?」
「すぐに戻る。お前も休んでろ」
言われるままに、対面するソファーへと腰かける。
須藤先生はすぐに病室を出て行く。
そして暫くすると、病室にはトレーの中に何かを持って姿を見せたのは、
今日、外来はないからと断られた裕先生だった。
「こんにちは。
里桜奈ちゃん、貧血だって?」
そう言うと裕先生は、楓我さんの頭元のボタンを押す。
「はいっ、奥村さんどうしましたか?」
「裕です。
奥村さんの病室に簡易ベッドと寝具を一式お願いします」
「わかりました」
すぐに声が途切れる。
暫くすると、看護師さんがすぐに支度を終えて病室へと運び込んでくれた。
「さっ、里桜奈ちゃんはこっちのベッドにどうぞ」
裕先生に促されるままに、私はベッドの上へとよじ登って横になると
私の腕にも点滴の針が留置された。
「今日、顔出してくれてたんだね。
外来には出てなくて、さっきまで外出してたから会えなくて悪かったね」
「私が勝手に来ただけだから……」
「先生……託実さんは?」
「Ansyalの一件で、託実も凄く参ってるね……。
託実だけじゃなくて、メンバー皆……苦しんでるよ」
先生は窓の方に視線を向けながら、
独り言を呟くように、私に情報を公開してくれた。
「里桜奈ちゃんも辛かったでしょ。
里桜奈ちゃんは、確か……Takaのファンだって言ってたね」
「うん。
Takaが大好きだったはずなの。
だけど今は心がわからなくなっちゃった。
Takaが二人って聞いて、混乱しちゃったのかな。
私が好きなTakaはどっちのTakaなんだろうって思ったら、
わけわかんなくなっちゃった。
Takaのお葬式の後……、ずっと実感がわかなかったの。
でも同じチームの祐未が自殺しちゃった。
祐未もTakaファンなの。
私よりもずっと前からAnsyalを知ってるの。
だから……Takaを本当に好きな人だったら、
祐未みたいになるのが当然なのかな……って。
私……好きだって言ってるけど、
本当はTakaのことどうでも良かったのかなって」



