朝なんて来なければいい。


何度も何度も願って眠るのに、
朝は必ずやってくる。



眩しすぎる光と絶望の日々を連れて。



虐められる側が、そんなに悪いの?
虐める側は悪くないの?


虐められるのが、そんなに情けないこと?





虐められるようになってから、
ずっとそればかりがグルグルしていく。



考えても考えても答えなんて、
何一つ見つからない。


ただ……何度も何度も責めるように繰り返される言葉に、
世界の中で一番悪いのは私自身なのだと思い知らされる。



『存在してちゃいけないんだよ』




心の中、いつしか悪魔の囁きが木霊して……その声が、
やがて優しく響き渡っていく。



出口の見えない闇。

光の届かない世界。





助けを求めることが出来ない孤立感。




居場所のない私。





そして……心を心として尊重しない義務的な学校の教育体制。




それはその日も続いた。
保護者の呼び出しと言う形で。








「里桜奈全く、アンタ何やったのよ。
 お母さんも暇じゃないのよ」



放課後。


仕事を早退して学校の呼び出しに、
顔を出してくれた母を校門の前で出迎える。




忙しいなら……わざわざ来なくても良かったのに。



心の中、ホツリと呟く。





「今日は会議室だって」



福永先生に先に言われていた場所を母に伝えると、
案内するような形で職員室の隣の少し狭い会議室へと母を誘導する。




手の甲で静かにノックする。




「はい。どうぞ」



ドアの向こう、担任の声が出迎える。


ゆっくりとドアを開くと机の前、
担任の福永先生が立ち上がって母を迎え入れる。





「福永先生、いつも里桜奈がお世話になっています」




私の隣、母が深くお辞儀をして形式的な挨拶を始める。





別に、この人にお世話になってないよ。

この人は何も助けてくれないから。



心の中、静かに闇の声が木霊する。