「こんにちは」

「あぁ、里桜奈ちゃん来たのね。
 紗雪は中に居るわ。

 私たちは事情があって、祐未に会えそうにないのよ。
 里桜奈ちゃんは、Ansyalの名を出さずにクラスメイトとして祐未ちゃんに会ってきなさい」



意味深な言い回しで、総長の貴姫さんは私の背中を送りだす。




緊張したまま玄関の方へと向かうとゆっくりとチャイムを鳴らす。



「はーい」

「聖フローシアで祐未さんと同じクラスの吉崎です。
 慌ただしい時に申し訳ありませんが、紗雪さんに連絡を頂いてお邪魔しました。
 ご焼香させて頂いても宜しいでしょうか?」



緊張しながら、一生懸命道中で考えてきた挨拶を告げる。



すると中からドアが開いた途端に、
発狂したように取り乱している女性の声が聞こえる。




『Ansyalが祐未ちゃんを殺したのよっ!!
 あんなことをする子じゃなかったのに……』




その言葉が真っ直ぐに突き刺さって痛かった。

Ansyalのせいじゃない……。
Ansyalは悪くない……私がちゃんと……祐未を知ってたら……。




「まぁ、吉崎さんでしたわね。
 紗雪ちゃんからお話は伺っています。

 先ほどはびっくりしたでしょう?
 妹もわかっているとは思うんですよ。

 でもね……何かの責任にしないと今は現実と向き合えないのよ。
 ご挨拶がおくれましたわね。
 祐未の伯母です。

 どうぞ、祐未ちゃんにあってあげて……」


伯母さんに誘われるように祐未の自宅へと上がらせて貰って、
通された場所に行くと、紗雪がその傍で座り込んでた。



「紗雪……」

「あぁ、里桜奈。
 祐未……綺麗な振袖着てメイクしてるよ」


まだお布団の中に横たわっている祐未の顔には、
真っ白な布がかけられている。



「吉崎さんだったわね。
 どうぞ、祐未ちゃんにあってあげて……」


そう言って伯母さんは、真っ白な布を顔からめくりあけた。


布団で眠っている祐未は綺麗に化粧を施されてた。
だけど自殺したことは、すぐにわかる。




「祐未ちゃんの苦しみを私も妹も……皆、知らなかったのね」




そう言って伯母さんもまた口を噤んだ。


それ以上、祐未を見続けるのは辛すぎて
そのまま目を伏せて白い布を再びかけて欲しいことを伝える。




そのまま暫く、祐未の傍に居させてもらって紗雪と共に祐未の自宅を後にした。





祐未の自宅まできているにも関わらず、
祐未のお母さんに拒否られて、ご焼香をあげることすら許されなかった
チーム仲間は……そんな状況下でも、翌日もまた会場前に姿を見せた。





明日……明後日……。
そしてもう、祐未とは会えなくなってしまう。


Takaが亡くなったって聞いた時も凄く辛くて、
光が失ってしまったように思った。


だけど……祐未の死は、それとはまた別の寂しさが深く込み上げてくる。




ねぇ……祐未。
私は祐未にまだ何をすることが出来たのかな?




友達として……私は、
祐未に……友達として存在で来てたのかな……。




そんな思いばかりが、何度も何度も心の中を過り続けた。