告別式の夕方、24日に家を飛び出して以来、
三日ぶりに家の玄関を潜った。
玄関を開けた途端、無言で頬を打って何処かへと出掛ける父に
「何してるの。里桜奈。連絡くらい寄越しなさい」っと文句を言って私を抱きしめる母。
そんな両親に迎えられて家の中に入る。
「ほらっ、里桜奈。
お友達が亡くなったんですって。
紗雪ちゃんが電話かけてきてくれたわ。
紗雪ちゃんのお家にお世話になってたたんですってね。
熱まで出したなんて、迷惑かけたのならちゃんと里桜奈から電話が欲しかったわ。
もう熱は下がったの?
Ansyalだったかしら。
里桜奈、好きなのね……。
貴方の部屋の机でCD見つけたわ」
「うん……。Ansyalが私に友達を繋げてくれたの」
「そう」
「お友達が亡くなったのはショックかもしれないけど、
ゆっくり元気になりなさい。
ほらっ、晩御飯食べなさい」
想像以上に優しく迎えられた私は、
戸惑いながらその後、母と時間を過ごした。
逃げるように家を飛び出して寮生活を始めた私にとっては、
久しぶりにお母さんとゆっくりと話をした気がした。
「ほらっ、まだ無理しないのよ。
28日から年末年始モードで慌ただしくなるわ。
だから里桜奈にも手伝って貰うわよ。
今日はゆっくりしなさい」
「うん……お休みなさい」
母にそう伝えて、階段を登り三日ぶりに自分の部屋へと入った。
そのままベットに倒れ込んで、電気を消すと私は携帯電話を握りしめる。
*
里桜奈ちゃん
家には無事に帰れた?
ご両親は大丈夫だった?
大切な存在を失った直後で、
まだまだ心が辛いと思うけど、
無理しないでゆっくり休むんだよ。
疲れた時は、休んでもいんだよ。
お休みなさい。
楓我
*
お休みなさい……楓我さん。
返信しようと思ったけど、もう23時をまわってしまっているのに気がついて
メール送信を思いとどまり、心の中だけで呟いた。
その日……私の夢の中に初めて祐未が姿を見せた。
真っ白な空間で、祐未が私に笑いかけながら黙って手を振り続ける。