「ごめん、待った?」
約束の時間の五分前に、樹は姿を現した。グレーの細身のスーツがとてもよく似合っていて、カフェにいる女性の視線が一斉に集まってくる。
「マネージャー! お忙しいのにすみません」
花名が立ち上がり頭を下げると、樹は座るように促した。
「そんなかしこまらないでいいよ。ほら、いいから座って」
「は、はい。失礼します」
花名が椅子に座るのを見計らって、樹は店員を呼んだ。
「ブレンドコーヒーを。小石川さんは?」
「私は、水でいいです」
「そんなこと言わないでよ。ハーブティーは好き?」
「……はい」
「じゃあ、ハーブティーをお願いします。あと、新作のオーガニックケーキを彼女に」
「あの」
「嫌いじゃないよね、ケーキ。この前の試食会で食べたらおいしかったから食べてみてほしいんだよ」
このカフェは佐倉園芸の傘下にあるコーヒーチェーンを展開する会社が運営している。店のコンセプトやメニューは佐倉園芸と共同で開発しているため、試食会にも参加するのだ。その時の話を樹は花名に話して聞かせた。
「あ、ほらケーキ来たよ。食べて」
少しして運ばれてきたケーキプレートはまるで花畑のようにデコレーションされていた。
「かわいいですね」
「でしょ! 見た目以上に味もいいんだよ。このローズヒップのジャムをつけて食べると絶品なんだ」
樹の言う通り、それはとてもおいしかった。しかし、花名にはのんびりと味わっている余裕などない。
「じつは」と話を切り出す。
約束の時間の五分前に、樹は姿を現した。グレーの細身のスーツがとてもよく似合っていて、カフェにいる女性の視線が一斉に集まってくる。
「マネージャー! お忙しいのにすみません」
花名が立ち上がり頭を下げると、樹は座るように促した。
「そんなかしこまらないでいいよ。ほら、いいから座って」
「は、はい。失礼します」
花名が椅子に座るのを見計らって、樹は店員を呼んだ。
「ブレンドコーヒーを。小石川さんは?」
「私は、水でいいです」
「そんなこと言わないでよ。ハーブティーは好き?」
「……はい」
「じゃあ、ハーブティーをお願いします。あと、新作のオーガニックケーキを彼女に」
「あの」
「嫌いじゃないよね、ケーキ。この前の試食会で食べたらおいしかったから食べてみてほしいんだよ」
このカフェは佐倉園芸の傘下にあるコーヒーチェーンを展開する会社が運営している。店のコンセプトやメニューは佐倉園芸と共同で開発しているため、試食会にも参加するのだ。その時の話を樹は花名に話して聞かせた。
「あ、ほらケーキ来たよ。食べて」
少しして運ばれてきたケーキプレートはまるで花畑のようにデコレーションされていた。
「かわいいですね」
「でしょ! 見た目以上に味もいいんだよ。このローズヒップのジャムをつけて食べると絶品なんだ」
樹の言う通り、それはとてもおいしかった。しかし、花名にはのんびりと味わっている余裕などない。
「じつは」と話を切り出す。


