愛しい人

花名は震える手で、ブラウスのボタンを外すとスカートのファスナーを下ろした。乾いた音を立てて床にスカートが落ちる。

「なにを言ってるんだ」

「先生に喜んでいただけるかは分かりませんけど、精一杯頑張りますから」

「……小石川さん、服を着て」

「どうして。私じゃダメですか?」

女としての魅力がないと言われているようで、花名はいたたまれないような気持になった。

「そういうことを言っているんじゃない」

「だったら抱いてください。私は先生にならなにされてもかまいません」

むしろ、初めて抱かれるのならば純正がいい。

「ひと目ぼれでしたから」

たとえ実らない恋であっても、思い出としてとっておきたい。それが本心だ。

けれど純正にこの思いは伝わらなかったようだ。