愛しい人

「熱いうちに召し上がってください」

「ありがとう。いただきます」

 小さく頭を下げ、花名はテーブルから離れると純正が食事をしている間に風呂を洗った。

同時に洗濯をし、そうこうしているうちに純正の食事が終わる。

コーヒーを出し、食器を片づけそれが終わると、リビングのソファーに座っていた純正に後ろから声を掛けた。

「終わりました」

「お疲れ様。もう帰っていいよ」

 純正は振り返ると、「気を付けて」とだけ言った。

「はい。失礼します」

 マンションから出ると、すぐ目の前にある地下鉄の階段を降りる。

自宅アパートまで二十分。花名は自宅に帰ると、軽く夕飯を済ませてベッドにもぐりこんだ。

それくらい気持ちが疲れてしまっていた。

清掃のバイトはやめてしまった。時間的に無理があったし、自分の体力に限界を感じていたから遅かれ早かれ辞めざるを得なかっただろう。