愛しい人


寝室から出ると、そこは二十畳ほどの空間で、家具は全てミッドセンチュリーで統一されていた。

アイランドタイプのキッチンの前にはテーブルとスツールが二脚。窓際にはサンスベリアの鉢が置かれている。

「廊下を出るとバスルームとトイレ。反対側は八畳の洋室。今は物置にしているが、みてくるといい」

「いえ、もう結構です」

 花名は小さく首を振った。これ以上確かめなくても純正の言葉だけで十分だ。

「納得した?」

「はい。……あ、でもジャスミンの人は?」

「あの花は入院している知人に贈っているものだよ。君がここにいても咎めるような女性はいない」

純正は手にしていたトレイをテーブルの上に置くと、花名に声を掛けた。

「じゃあ、そこに座って。今、ブランケットを持って来るから」

「……あ、はい」

花名は促されるまま、黒い革製のソファーに座った。

足をしっかりと閉じていないと、その奥まで見えてしまいそうだ。それにバストトップも、浮いてしまってないか気になる。電源の落とされたテレビ画面に自分を映してみるがよくわからない。

そうこうしているうちに純正はリビングへと戻ってきてしまった。