愛しい人

「どうかした?」

 その声に振り返ると、ティーポットとカップをのせたトレイを持った純正が、不思議そうに花名を見ていた。

「やっぱり、帰ろうと思って」

「帰る? 急にどうしたって言うんだ」

「だって、私がいたら先生の奥様に嫌な思いをさせてしまうでしょう」

「……妻? 残念だけど、俺は独身だ。この部屋にはひとりで住んでる」

「うそ」

「嘘をついてどうするんだ。信じられないなら他の部屋を見てくるといい。おいで」

 純正はそう言って、花名をリビングに案内した。