愛しい人

「ご迷惑をおかけしてすみませんでした! 助けていただいただけでなく、こんなことまでしていただいて、本当に申し訳ございません」

 花名は必死に頭を下げた。下げた頭は申し訳なさであげられない。こうするほかにどう詫びたらいいのかと、必死で考える。

そんな花名を見て、純正は、「迷惑だなんて思ってないさ」と言った。通りかかったのが自分でよかったと思っているのだとも言ってくれた。

「だって君、もたもたしていたら死んでいたかもしれないだろう。俺は医師としてできることをした。つまりこうするのは当然の流れで、そんなに恐縮されると逆に困る。だからさ、もういいかげん頭を上げてくれないかな」

 そこまで言われてようやく頭を上げる決心がついた。

花名は遠慮がちに純正の方を見る。白衣こそ着ていないが、医師としての顔がそこにあった。花名の憧れている外科医の結城純正の顔だった。花名は安堵した。

彼のしたことの全てが医師としての行為だと考えれば、自分がしてもらったすべてのことをすんなりと受け入れられるような気がした。