愛しい人

「お忙しいのにすみません」

「少しくらいなら平気ですよ。小石川さんは? お時間大丈夫ですか?」

「私は、はい」

 カンファレンスルームのドアを開け電気を付けると、大津は花名を部屋の中に通す。

「どうぞ、座ってください」

「失礼します」

 大津と向かい合う様に座る。先に口を開いたのは大津の方だった。

「僕としては、そのまま同意書にサインだけ下さるととても有難かったんですが、そう言うわけにはいきませんよね」

「当然です」

ハハと力なく笑う大津を花名は軽く睨んだ。