愛しい人

面会時間の終了を告げるアナウンスを聞きながら、花名はエレベーターのボタンを押した。それからすぐ降りて来たエレベーターに乗り込もうとすると中から大津が下りてくる。

「大津先生!」

 大津は花名がいたことに驚いた様子で小さく会釈をする。

「どうも。お母さんの面会ですか?」

「はい。先生にここでお会いできて良かった。私、聞きたいことがあったんです。新しい治療のことなんですが、あれはどういうことですか? それに母は新しい先生が来たって言ってましたけど、どんな先生なんでしょうか?」

 矢継ぎ早に質問を飛ばす花名に、大津は少し困った様子で頭を掻く。

「あれ、みたんですね」

「はい。母は乗り気です。でも治療費の事とか、気になることがたくさんあって……」

「そうですか。ちゃんとご説明しますね。ここじゃなんですから、あそこで」

 大津はナースステーションの隣にある、カンファレンスルームと書かれた部屋を指さした。