「すみません、大津先生にお会いしたいんですが……」
花名はナースステーションのカウンター越しに声を掛ける。するとひとりの看護師が作業の手を止めて花名の方に歩み寄った。
「ご家族の方ですか?」
「あ、はい。小石川雅恵の娘です」
「お約束はありますか?」
「約束はしていません。でも、どうしても聞きたいことがあるんです」
花名の言葉に看護師は怪訝そうな表情を見せた。
「先生も暇じゃないんですよ。突然来られても困ります。とにかく今はいませんから後日アポを取ってください」
そう強く言われて、花名は恐縮したように頭を下げた。
「……すみません」
以前対応してくれた看護師は応じてくれたのに、色々な人がいるものだと思いながら母親の病室に戻ろうと踵を返した。
「おかえり、花ちゃん。先生には会えた?」
「ううん、会えなかった。約束がないとダメなんだって。明日お母さんから大津先生に伝えてね、私が会いたいって言ってたって」
「分かったわ」
「それから書くね、この書類。それでもいい?」
「もちろんよ」
花名は書類を母親に返すと、洗濯ものを持ってランドリーに向かった。
そして洗濯を終えると「また明日」と言って病室を後にした。
花名はナースステーションのカウンター越しに声を掛ける。するとひとりの看護師が作業の手を止めて花名の方に歩み寄った。
「ご家族の方ですか?」
「あ、はい。小石川雅恵の娘です」
「お約束はありますか?」
「約束はしていません。でも、どうしても聞きたいことがあるんです」
花名の言葉に看護師は怪訝そうな表情を見せた。
「先生も暇じゃないんですよ。突然来られても困ります。とにかく今はいませんから後日アポを取ってください」
そう強く言われて、花名は恐縮したように頭を下げた。
「……すみません」
以前対応してくれた看護師は応じてくれたのに、色々な人がいるものだと思いながら母親の病室に戻ろうと踵を返した。
「おかえり、花ちゃん。先生には会えた?」
「ううん、会えなかった。約束がないとダメなんだって。明日お母さんから大津先生に伝えてね、私が会いたいって言ってたって」
「分かったわ」
「それから書くね、この書類。それでもいい?」
「もちろんよ」
花名は書類を母親に返すと、洗濯ものを持ってランドリーに向かった。
そして洗濯を終えると「また明日」と言って病室を後にした。


