愛しい人

「……最低ですね。そんなことを言う人だなんて思いませんでした」

「どうとでも。悪いが医療は慈善事業じゃないんですよ。それだけはご理解ください」

 純正は病院名の入った封筒を差し出す。花名はそれを受け取るとそっと中を覗いた。中にはたくさんの書類が入っている。

「なんですか、これ」

「受けたいんですよね、治療。手続きの方法が書いてありますからよく目を通しておいてください。それでは、今日はこれで。そちらの主治医には私から手紙を書いておきます」

「ありがとうございました」

 花名は頭をさげて診察室を出た。会計を済ませて病院を出ると、その足で母親の見舞いに行った。バスの中でもらった資料を見た。

「お金、どうしよう」

 掴んだはずの希望が指の隙間からこぼれ落ちていくのを感じながら震える拳を握りしめた。