愛しい人

しかし彼は全く動じない。むしろ、言われて当然という顔をする。

「あなたのおっしゃる通りです」

 純正の静かな声を聴いて、花名は我に返った。

「すみません。つい、カッとなってしまって……先生を責めるなんて、どうかしてますよね」

 申し訳なくて、下げた頭があげられなかった。

「本当にごめんなさい」

「謝罪は結構です。時間を無駄にしたくはないんですよね」

「……はい」

「話を続けていいですか? その未承認薬を使用する方法についてです」

「そんな方法が?」

「あります。個人輸入という方法です」
 純正は治療薬の個人輸入について花名に説明を始めた。