愛しい人

「ご相談内容としては、お母様の治療方針について、でよろしいですね」

「はい。私は母の病気をどうしても治したいんです。けれど、大津先生は難しいとおっしゃいました。先生なら治せますか?」

「現段階では、どちらともないとお答えせざるを得ません。ただ、治療法がないわけではありません」

「治療法があるんですか? ぜひ受けたいです!」

「待ってください。まずは今現在お母様の状態について確認させてください。何事にも順序や決まりというものがあるんですよ」

純正の言い分は正しい。しかし花名は焦っていた。

三十分という限られた時間内に母の生きる可能性についてどうしても聞いておきたかったのだ。

「……大変お恥ずかしい話ですが、金銭的な余裕がなくて相談時間の延長が厳しいんです。無駄な話は極力避けたいんです」

 花名が語気を強めて言うと、純正は小さく息を吐いた。