愛しい人

「確認させていただきました。それでは、待合室までご案内致します」

 事務員についていくと、クラシック音楽が流れるホテルのラウンジのような場所に通された。花名の他にも相談者らしい人たちが数いたが、パーテーションで区切られていて顔を合わせないようになってるようだ。

「こちらの番号でお呼びいたしますので、どうぞ、おかけになってお待ちください」

 花名は事務員から番号札を受け取ると促されるまま、ソファーに腰を掛けた。

しっとりと体を包み込むような座面はとても座り心地がよかったが、どことなく落ち着かず、もう一度座り直してみる。

三時を少し回った頃、目の前の診察室のドアが開いた。受付とは別の事務員が出てきて「三番でお待ちの方」と言った。

花名は「はい」と言って立ち上がる。

「三番、私です」

「大変お待たせいたしました。どうぞ、お入りください」

 事務員に誘導され、花名は診察室の中に入った。

「失礼します」

 深々と頭を下げ、顔を上げた花名は目の前にいる医師を見て思わず「あっ」と声を漏らした。