愛しい人

廊下に出て、待合室のソファーに腰を下ろす。しばらくすると、封筒を持った女性の事務員がやってきた。

「小石川さん、ですね」

「はい」

「お待たせしました。こちらをお持ちください」

差し出された封筒を花名は両手で受け取った。

「中に、診療情報提供書と画像のデータが入っています。まずは、ご自身で深山記念のセカンドピニオン外来の予約をしてください」

「あの、すみません。予約ってどのようにすればいいんでしょうか?」

「ああ、そうですよね。説明します」

 花名は事務員からセカンドオピニオン外来の予約の方法の方法を聞くと、礼を言って立ち上がった。

それから母親の病室に顔を出し、いつも通りに振舞った。

母親のベッドの傍で他愛もない会話を楽しみながら洗濯物が乾くのを待つ。花名は母の笑顔をみつめながら祈った。

大津先生がくれた希望の種が、このまま花を咲かせてくれますように。