仕事は手を抜けない分、私生活は荒れ放題で五歳くらい老けちゃったと思う。
「なあ、茉莉花。お前、最近ちゃんとメシ食ってる?」
そんな私の心配を晴紀はしてくる。しかも毎日。患者さんに対してもこれくらい熱心だといいのに。
正直放っておいて欲しいけど、誰かに頼りたい気持ちもあって、私ってワガママだなって今更ながらに思った。
「食べて……ない」
「はぁ?ダメだろ、ちゃんと食わないと。鮨でも行くか?親父の行きつけの店でもいいなら予約取れるぞ」
深山先生の行きつけなんて予約何年待ち?みたいな店しかなくて、そんな美味しいお鮨なら食べられるかも知れないと思ったし、
「……うん、いく」
たまには晴紀と食事に行くのも気分転換になっていいかなって軽い気持ちでOKした。
仕事終わり、晴紀は高級外車で私を迎えにきた。
「新車?」
「そう。助手席に座るの茉莉花が初めてだぜ!」
この車は日本に数台しか走っておらず、何ヶ月もまってようやく納車されたそうだ。
どれだけすごい車なのかなんて分からない。
けれど、晴紀があまりにも嬉しそうに話すからつられて私も笑顔になる。
晴紀の、いい意味で子供みたいな無邪気さは、大人を装うことしかできなくなった私にはとても眩しくて羨ましかった。


