愛しい人


 本当ならば、認定資格の更新をする為に参加しなければならなかったはずだし、たまにしか取れない連休を取って泊りがけでのんびりしたいななんて話していたのに。

『どうして?』

これはなんかもう、失恋フラグ?ってピンときた。

『いやほら、外科医が全員出払うわけにもいかないだろう』

『いまさら何言ってるの?』

学会ヘ行くのは数名の医師だけで、誰が病院に残るか調整が済んでいたはずなのに。

『だから俺が留守番しようってことになったんだよ。だから、晴紀と……』

『あのさ、純正。そういうのやめてよ! 私の気持ちに気付いているくせに、どうして深山先生とくっつけようとするの?』
 
『そんなことしてないさ』

 つくづく嘘が下手だと思った。

発した声が上ずっている。視線すら定まっていない。正直すぎて、ムカついた。

『してるよ! そのくらいのことが分からないとでも思ってるの? 私は深山君となんて付き合うつもりはないわ。純正が好きなの。純正じゃないと嫌なの』

ああ、もう。最低だ。

こんな告白したくなかった。雰囲気のいいレストランとか、夜景を見ながらとか、私にだってそれなりのプランはあったのに。

でも、純正はもっと最低だった。