「ここは?」
「リハビリ訓練室だよ」
広い室内には平行棒や、上り下りできる階段、マット、様々な機械類が並びたくさんの患者が一生懸命リハビリに取り組んでいた。
「あそこにいるのが、瀬能茉莉花」
純正が言う方を見ると、髪の長いきれいな女性が歩行の訓練を受けている。その傍らには晴紀の姿もある。
「ジャスミンの花束を贈っていた相手だ」
「……あのひとが」
「そう。俺の大切な同僚だった女性……今は事故の後遺症で記憶をなくしてる。俺のことも分からないんだ」
「同僚……だったんですか」
(樹さんがいっていた"茉莉花先生"というのは彼女の事だったんだ。毎週欠かさずジャスミンの花束を贈るような女性だもの、純正さんは彼女のことが好きなのではないだろうか)
そう考えて花名は不安に襲われた。
もしそうであれば、何のとりえもない自分より同じ医師である女性の方が純正にふさわしい。


