愛しい人


やがて看護師がやってきて点滴が始まるといった。

花名は病室を出て院内を散歩し、カフェでお茶を飲んだ。昼食を食堂で食べ、部屋に戻ると少しして純正がやってきた。

久しぶりに見る白衣姿に花名はつい見とれてしまった。普段着の純正ももちろん素敵だが、白衣を着るとより凛々しく見える。

「体調はいかがですか、小石川さん」

「とてもいいです。娘も来てくれて今日は朝からとても楽しかったですよ」

 弾むような声で雅恵は答える。

「それは良かったです。私からご報告が二つあります。まずひとつ目ですが、治療の経過がとてもいいです。今の治療が終わったら退院して頂いて外来通院に切り替えていきましょう」

「退院していいんですね? ありがとうございます」

「よかったね、お母さん」

 花名は雅恵の手を握った。

長い入院生活がようやく終わるのだ。目に涙を受かべながら純正に感謝を伝える。