「あら、そう。結城先生も心配してたのよ、あなたが面会に来ないことを知っていたみたいで、連絡取れてますかって聞かれたのよ。連絡が来たら教えて欲しいっておっしゃってね。熱心な先生よね」
「結城先生が? ……そうだね、すごくいい先生よね」
雅恵にまで自分のことを聞きに来ていたとは知らなかった。
純正がどれだけ必死に花名を探していたのか分かった気がした。
「本当に。そう言えば花名、珍しい服装」
「……あ、これ?」
純正が選んだ服だ。
襟もとに大きなリボンのついた光沢のあるベージュのブラウスにウエストマークされた黒いマーメードスカート。
足元は華奢な黒いパンプス。いつもコットン素材のラフな服装ばかりだった花名が選んだことのないファッションである。
しかも樹に花名らしくないと言われてしまった黒のワンピースと同じブランドのものだ。
「へん、かな?」
自信なさげに花名は聞いた。すると雅恵はすぐに否定する。
「そんなことないわ、すごく素敵よ。花ちゃんの魅力が引き立つような服ね。よく似合ってる」
(魅力が引き立つ……)
きっと純正はそう思ってこの服を選んだのだろう。今朝も着替えが終わった花名のことを満足そうに眺めていた。
(きっと私よりもどんな服が似合うのかということを分かってるのかもしれないな)


