濃紺の上下スクラブに上着を一枚羽織ったただけの姿で店の中に入ってくるのは、隣の病院の勤務医である結城純正(ゆうきじゅんせい)。

彼の名前は首から下げているIDカードで知った。そして純正が外科医であるということも花名は知っている。

店の入り口から真っ直ぐにこちらへと向かってくるその姿はまるでランウエイを歩くモデルのようだ。

長身で端正な顔立ちをしている純正は本当にどこかの雑誌から飛び出してきたのではないかと錯覚するほどいい男だったが、その容姿だけではなく、純正は外科医としての腕も余程のものらしい。

「うちの人はあの先生に助けられたんだよ」と客が話しているのをよく耳にしていた。

また、純正の振る舞いはとても紳士的だと有名で、もちろん花屋の店員である花名へもその態度を変えることはない。

その爽やかな笑顔と優しい話し方に心癒されているのは患者だけではない。

少なくとも自分も、彼の存在に救われている。