愛しい人


「申し訳ございません。応じられません」

「なぜ? どうしてできないんですか? 納得のいく説明をお願いします!」

すると女性は困ったように視線を泳がせる。

「では、対応できる人をここに呼んでください」

「申し訳ございません」

 門前払いの指示でも出されているのか、受付の女性は「申し訳ございません」を繰り返すばかりだ。樹の命令には従わざるを得ないのだろう。

(これ以上彼女を困らせるのも可哀そうか……)

諦めかけた時、突然背後から声がかけられた。

「どうかしましたか?」

 純正が振り向くとそこには髪の長い若い男性が立っていた。