どれくらい待っただろうか。
徐々に日が傾いてきて、仕事終わりの社員たちが次々とビルから出ていく。だが佐倉樹はまだ帰社しない。
「申し訳ございません。本日はお引き取りいただけませんでしょうか」
ふと顔をあげると警備員の男性が純正を見下ろしていた。ロビーの明かりはほぼ消され、受付の女性もいなくなっている。
「分かりました。今日は帰ります」
純正は立ち上がり、ビルの外へ出た。
けれど病院へ戻る気持ちにはなれなかった。幸いなことに看護師から電話は入らない。
だったらもう少しここで待ってみようか。このまま帰ってもおそらく仕事は手に着かないだろうから。
二時間ほど過ぎたところで純正の携帯電話が鳴った。病院からだった。
「……わかりました。すぐに戻ります」
ため息をひとつつき通りへ出るとタクシーを拾った。


