愛しい人



 雅恵の病室を出ると、急いで医局へ戻った。パソコンを立ち上げて花屋の名前を検索する。

「佐倉園芸、だったよな確か」

 店はすぐにヒットした。

「本社は港区。電話番号は……」

 純正はメモにペンを走らせる。

「おい純正。なにしてんの?」

 晴紀は隣の椅子に座るとパソコンの画面をのぞき込んでくる。

「あ!ここ、あの子の店じゃん。最近店にいないみたいだけど、辞めたの?」

「さあな」

「さあなって、お前ら付き合ってたんじゃないのかよ? もしかして別れたとか……俺、お前のこと悪い男だとかいっちゃったんだよね。ごめんね純正」

 晴紀はおおげさに謝ると手を合わせる。

「……んだよ、それ。謝るくらいならどうしてそんなこと言ったんだ」

(行方不明になった原因がお前なら土下座じゃ済まされないからな)

 純正は晴紀を睨みつけた。けれど晴紀はお構いなしに話を続ける。