「……でもね、先生。あの子の名誉のために言っておきますけど、普段はとってもいい子なんですよ」
遠慮がちに笑う顔が花名に似ていて改めて親子なのだなとほほえましく思う。
「知っています。お母さん思いの優しい娘さんですよね」
(でもお母さん、娘さんは今、行方不明だ……)
ホテルで別れてから連絡がつかなくなった。
アパートにも帰っていないようだ。もちろん、純正のマンションへも姿を見せていない。
花名は仕事をさぼるような人間ではない。
純正に会いにくくなった時でも仕事だからとマンションには来ていた。
そんな彼女が連絡もせず姿を見せなくなることなんてあるはずがない。
気になってホテルに問い合わせたら、別の男性とタクシーの乗ったようだと教えてくれた。
花名は見ず知らずの男についていくような女ではない。
となると、知り合いのはずだ。そう考えて思い浮かぶ男がひとりだけいる。
「小石川さん、娘さんから連絡があったら僕に教えてもらえますか?」
「はい、いいですよ」
「あと少しで治療が終了するので、そのお話を」


