「あ。どうしよう、ごめんなさい!」
椅子から立ち上がり、床にしゃがんだ。
欠片を拾おうと手を伸ばすと背後から樹の手が伸びてくる。
まるで抱きしめるような体制に花名は身を固くした。
「触らないで、僕が片づけるから。小石川さんが怪我でもしたら大変だからね。これ以上傷ついてほしくないんだ」
耳元で樹の声が響いて、背中には鼓動が伝わってくる。
「樹さん……あの、近いです。離れてください」
「どうして? あんな得体のしれない医者よりも僕の方が小石川さんのことを大切に思ってるのに。君も気付いてたよね?僕の気持ち」
「……それは」
樹の気持ちには以前から気付いていた。でも確信が持てなかったのも事実だ。
「僕なら君を大切に育てて美しく咲かせることができる。ここで一緒に暮らそう。絶対に後悔はさせないから、うんと言ってくれないか。お願いだ……」
「ごめんなさい、樹さん。樹さんは素敵な人だと思います。いつも私のことを気にかけてくださって感謝しています。でも……」
晴紀と樹から聞いた純正の話はまだ真実と決まったわけではない。
確かめることは怖いけれど、なにもせずに嫌いになれる程純正への気持ちは浅くはない。
「私はまだ、純正さんのことが好きなんです」
「……なんだよそれ。認めない。絶対に認めないからな!」
温厚な樹から発せられたとは思えないくらい、怒りに震えた声だった。
腹の底から吐き出された黒い感情に足をすくわれて、花名は床にしゃがみ込んでしまった。
椅子から立ち上がり、床にしゃがんだ。
欠片を拾おうと手を伸ばすと背後から樹の手が伸びてくる。
まるで抱きしめるような体制に花名は身を固くした。
「触らないで、僕が片づけるから。小石川さんが怪我でもしたら大変だからね。これ以上傷ついてほしくないんだ」
耳元で樹の声が響いて、背中には鼓動が伝わってくる。
「樹さん……あの、近いです。離れてください」
「どうして? あんな得体のしれない医者よりも僕の方が小石川さんのことを大切に思ってるのに。君も気付いてたよね?僕の気持ち」
「……それは」
樹の気持ちには以前から気付いていた。でも確信が持てなかったのも事実だ。
「僕なら君を大切に育てて美しく咲かせることができる。ここで一緒に暮らそう。絶対に後悔はさせないから、うんと言ってくれないか。お願いだ……」
「ごめんなさい、樹さん。樹さんは素敵な人だと思います。いつも私のことを気にかけてくださって感謝しています。でも……」
晴紀と樹から聞いた純正の話はまだ真実と決まったわけではない。
確かめることは怖いけれど、なにもせずに嫌いになれる程純正への気持ちは浅くはない。
「私はまだ、純正さんのことが好きなんです」
「……なんだよそれ。認めない。絶対に認めないからな!」
温厚な樹から発せられたとは思えないくらい、怒りに震えた声だった。
腹の底から吐き出された黒い感情に足をすくわれて、花名は床にしゃがみ込んでしまった。


