愛しい人

 病院に到着すると、純正は茉莉花の病室へと急ぐ。

エレベータの扉でさえも開くのがとてつもなく遅く感じた。

ナースステーションを通りすぎ、病室へと足を踏み入れると医師と看護師が数名でベッドを取り囲んでいる。

「遅くなりました!」

「ああ、結城先生! 早かったですね」

 当直の医師はホッとしたように純正に視線を向けた。

「先生、対応ありがとうございます。後は僕が代わります」

 労いの言葉を掛け、純正はベッドサイドに進み入った。

「茉莉花」

 大きな声で呼びかけると、茉莉花はゆっくりと瞼を持ち上げる。

「う……ん、な……に?」

 若干かすれてはいるが懐かしい、茉莉花の声だった。

「わかるな、茉莉花」

 純正は茉莉花の手を握り力を込める。するとぎこちなく顔をしかめた。