「もしもし、結城です。茉莉……いや、瀬能さんの様子は?」
『意識が戻られたのを確認してから十分ほどたちますが、バイタルは異常ありません』
看護師の返答に純正は胸をなでおろす。
「そうか。それで、深山先生はもう到着しているのか?」
『それが、深山先生にも連絡をしているんですが、つながらなくて……結城先生、早く病院に来てください』
耳を疑った。こんな時に晴紀はなにをしているのか。
「わかってる。急いで向かうからそれまでは当直の先生に対応してもらってくれないか」
『承知しました』
通話を終えると今度は晴紀に電話をかける。
願うなら自分よりも早く茉莉花のもとに駆け付けて欲しかった。
けれど、いくら呼び出しても晴紀は電話に出ない。
(俺からの電話だから、出ないつもりか……)
純正は終話のボタンに触れると、スマホを上着のポケットにしまった。


