愛しい人

やわらかな生地でできた黒のワンピースはとても着心地がいい。おそるおそる鏡を見ると、普段と違う自分がいた。

「いかがですか?」

「はい、一応着れました」

「まあ。とてもお似合いですよ。お客様は肌がとても白くていらっしゃるので、黒がとてもよく映えます。靴はこちらを合わせましょうか。今年の新作です」

 そう言って差し出されたハイヒールに足を差し入れる。すると自然と背筋がしゃんと伸びた。

「素敵です。さあ、お連れ様にも見ていただきましょうね」

花名がフッティングルームからでると純正は満足そうに眼を細めた。

「いいね。似合うよ。花名も気に入っただろう?」

「はい」

「じゃあこれにしよう。バッグも好きなのを選んで」

 そう言われてもちろん花名は拒んだが、結局純正に勧められるまま服からバック小物に至るまで購入することになってしまった。

「花名。とてもよく似合ってる。だからあまり深く考えずに受け取ってもらえたら俺もうれしい」

 純正の言葉に花名はハッとした。素直に感謝の気持ちを伝えた方が、きっといい。

「はい。ありがとうございます、純正さん」

「どういたしまして。さあ、いこうか」