愛しい人


 純正との初めてのデート。

水族館に到着すると、花名は緊張しながら薄暗い館内を巡った。

スーツ姿の純正は少し周りとは浮いていたけれど、ずっと見ていたいと思うほどとてもカッコよかった。現に、すれ違う女性の視線が純正を追っている。

「どうした?ぼんやりしてたら危ないぞ」

 「ほら」そう言って純正は手を差し出す。

「えと……」

 その手を握っていいものか、花名が戸惑っていると純正は半ば強引に手をつないでくる。

「あの、でも」

「恥ずかしい? 大丈夫だよ。暗いし、誰も見てないから。それとも、俺と手をつなぐの嫌?」

「いやじゃないです。でも……」

「でも?」

「ううん、なんでもないです。純正さんの手、温かいですね」

 たくさんの人の命を救っているこの手をひとり占めできるなんて、なんだか少し恐縮してしまう。けれど、いまだけは存分に甘えてしまおう。