愛しい人

 車はやがて花名のアパートの前に到着した。

「送っていただいてありがとうございました」

 シートベルトを外し、ドアに手をかけようとすると運転席から伸びてきた手が花名の肩を掴んだ。

「純正さん?」

「……俺が花名の部屋の泊まるのもダメかな?」

「えっ? 私の部屋にですか」

「ごめん、なんでもない。なんだか俺、すごく余裕ないな」

 そう言ってうなだれる純正のこの姿はきっと自分しか見ることができないだろう。

そう思うと、どれだけ愛されているのかが伝わった気がして、心がとても満たされて気持ちになった。

「狭い部屋でよければ」

「いいのか?」

「はい。もちろんです」

 花名がそう答えると、純正は「ありがとう」と言ってほほ笑んだ。